たおピーの人生メモ

たおピーの人生をメモとして残しておく

小説【賃金奴隷からの開放】

時は2058年、今からおよそ50年ほど昔、賃金奴隷という制度があった。

お金というものがなくなった今、信じられない人も多いと思うが、この物語は、そのころにあった実話である。

 

山川裕二朗は、一部上場企業に勤めるサラリーマンである。

歳は39歳で、妻一人+犬一匹と東京で暮らしている。

子供は妻が好きでなく、子供がいるといろんなやっかいなことが多いので作りたくないという妻にあわせて作らなかった。今では、それで良かったと思っている。

 

犬が子供代わりになっており、夫婦の会話の中心になっている。

夫婦関係は、まずまずうまくいっている。といっても、ラフラブという感じではなく、人生の共同経営者として、唯一気の合う、分かり合える、友である。

 

生まれは、地方の田舎である。自然のなくなった東京と違い、自然豊かな山の中で生まれ育った。子供のころは、実家の農業を手伝い、竹の子をほったり、草刈りをしたり、薪割りをしたりした。春はイタドリを取って食べたり、夏は山に入ってクワガタを捕まえたり、秋は栗拾いや柿を取ったり、冬はソリで山の斜面を滑ったり、自然の中でよく遊んだ。

 

そんな山川裕二朗も中学生になると親元を離れ、寮に入った。

平日は寮から中学校に通い、土日は実家に帰って過ごす二重生活が始まった。

信号が一つもない村で育った山川裕二朗には、町での生活が刺激的であった。

 

このころファミリーコンピュータという家庭用ゲーム機が登場した。

山川裕二朗もご多分にもれず、このファミコンなるものに夢中になった。

元気に外を走り回っていた山川裕二朗も家にこもってファミコンをすることが多くなった。そしていつしか田舎での生活は面白みがなく退屈でヒマで都会での生活にあこがれるようになった。